カップルが両親になる、2人にとっての大きな移行期をイタリアでは
『1+1=3』と表すことがあります。
そんなイタリア人カップルの関係は、子どもが生まれたらどうなるの?
今回はイタリアの産後クライシス事情に迫ります!
タップできる目次
産後クライシスはイタリア語で何て言う?
週を重ねるごとに目立っていくお腹のふくらみを感じ、
赤ちゃんを家に迎える環境を整えて、待望の我が子の誕生。
母親である自分自身も夫も、我が子を愛おしく思い、親になった喜びを感じながらも
夫婦は、それまでの2人きりの生活との大きな変化を経験します。
カップル単位で行動するイタリア人は、
土曜日の夜の友達との集まり、日曜日の午後の実家での食事
そして定期妊婦検診も、パートナーが同伴であることがとても多いです。
いつも『2』だったイタリア人カップルが『3』になる移行期に、
パートナーとの関係を再定義し、親としての自分を構築する必要性には想像以上の
フラストレーションがあります。
この時期に生じる夫婦関係の危機がを、イタリア語で
crisi di coppia dopo la nascita di un bambino と言います。
直訳すると、❝子どもの誕生後のカップルの危機❞。
産後クライシスと似た言葉だけれど、イタリアでは母親の❝産後❞でなく子どもの❝出生後❞と
言うんですね。
産後うつはイタリア語で depressione post-partum と言い、イタリア語を直訳すると
そのまま産後うつの意味です。
イタリア夫婦の産後クライシスの原因は?
日本とイタリア、産後クライシスが生じる背景の違いは?
まずは日本の産後クライシスの原因から見てきます。
日本の産後クライシス
日本では、以下の原因がよく挙げられます。
・産後のホルモンバランスの乱れ
・子どもが優先になる生活の変化と疲れ
・夫婦のコミュニケーション不足
・夫が育児や家事に協力的でない
・セッ〇スレス
妻が担う育児と家事の負担が重く、夫が協力的でないことに妻が不満を感じていることが
特に強調されています。
イタリアの夫婦の産後クライシスの原因
育児のための疲労やライフスタイルの変化、
夫婦間の育児負担のバランスが指摘されるのは日本と同様。
日本と比べてより強調される原因は、以下の3つです。
夫婦の親密性の変化
子ども中心の生活に変化し、お互いの意見に耳を傾けなくなったり、
夫婦間で効果的なコミュニケーションが行われなくなると、
パートナーとの間に溝が開き、孤独感を感じるようになる。
心の距離と同様に強調されるのが、体の距離。
夫婦の性生活の減少し、愛情をもってパートナーに触れることが不足します。
ロマンティックでセクシーな関係性が薄れ、
育児のパートナーとしての連帯感が優先されるのが新生児の育児期です。
アモーレの国イタリアのカップルにとって、親密でなくなることは大危機だにゃん
夫の嫉妬心
母親が赤ちゃんのお世話を主導する傾向は、イタリアも同様です。
妻は子どもが生まれた瞬間から夫婦間でも女性自身の人生でも、母親になる。
とりわけ息子が誕生すると、イタリア人女性は息子を溺愛するマンマになります。
2人のときは妻の愛は自分だけに向けられていたのに、
息子の登場で、妻の主な関心ごとは子どもに向けられるようになる。
嫉妬心を露にしなかったとしても、妻と子の関係にヤキモチを焼く。
自分が一番でなくなることへの嫉妬心は、夫婦の危機の原因になります。
夫のポジション
①猫を迎えた:1番→2番に下降↓
②長男の誕生:2番→3番に下降↓
③次男の誕生:3番→4番に下降↓
これは私の夫が人によく言う自虐ネタのジョークです(笑)
下の記事では私が産後にいつからどれくらい産後クライシスが続いたのか書いています:
産後にこうなった!イタリア人夫婦のリアルトーク
イタリア人女性が運営する人気YouTubeチャンネルで、
イタリア人夫婦が第1子誕生後の夫婦関係の変化について語られていました。
妻と夫それぞれの視点で、正直に赤裸々に回答していて好感が持てる会話だったので紹介します!
出産後に変わった夫婦関係3選
ママになる前と後で変わったパートナーとの関係性は?
- 時間
- 愛
- ロマンティシズム
パパになる前と後で変わったパートナーとの関係性は?
- セッ〇ス
- 優先順位
- 妻の夫に対する嫌悪感
妻の1番は「時間」│夫の1番は「性生活」
夫の回答への妻のコメントは、以下。
「あなたが書いた回答は、私も次の回答には書いたかもしれないわ。
でも、今すぐにではない。正直に言うと私にとって優先事項ではないから。」
正直な回答ですよね。
2人の間で性生活は夫婦の生活の一部と捉えられていて、赤裸々に語られていました。
日本人夫婦も、本音では同じように思っている人が少なくないと思うんです。
でも、日本で性は❝いやらしい❞解釈をされる傾向にあり、
夫婦の性生活について人前で話すのはタブーな雰囲気がある。
イライラしていることが多い産後の妻を前にして
「夫婦関係で変わったことは、セッ〇ス」と言うのは、勇気がいることですね。
妻の2番は「愛」
この回答への妻の説明は以下。
「息子が生まて、もう彼を愛していないということは決してない。
愛の立ち位置が変わったの。最初は、夫より息子のことを愛していると思った。
でも、本当のところは2つの違う形の愛がある。」
「あなたにも同じことが起きた?」と聞く妻に夫は、
「僕は同じように愛している。」と答えていました。
夫の3番は「妻の夫に対する嫌悪感」
3番目の回答は、意訳しています。(直訳すると「彼女は僕が嫌い」)
「どう書いたらいいのかわからないけれど、彼女は毎日のように僕に爆発するんだ。」
「(彼女が爆発するのは)分かるよ。
僕が仕事している間に、彼女はずっと赤ん坊と一緒にいるんだ。
僕が帰宅したら、彼女はやっとはシャワーを浴びて一息つけるんだ。
でも彼女はいつも❝僕❞にキレるんだ。」
この状況、産後クライシスを経験した方は心当たりがありませんか⁉
その後に続いたトークも、クライシスの頃の我が家を描いたように、
心当たりがありすぎる内容でした。
「僕が料理をすると、彼女は僕がキッチンを汚したと怒る。
僕が料理をしなければ、彼女は僕が料理をしないと怒る。」
そうなんです!
私も、爆発する対象はいつも夫だった。息子や他のことや人ではなかった。
キッチンのエピソードもありがちですよね。
妻の3番は「ロマンティシズム」
以下が、妻の説明。
「(息子が生まれる)以前は、仕事に行くときに私に気の利いたメモを残してくれたり
甘い言葉をささやいてくれていたわ。」
そして、衝撃的な夫のコメント。
「今は仕事に行く時に嬉しいんだ。仕事で一息つけるって。」
誤解をしないで欲しいのですが、この男性は冷たいのでもデリカシーがないのでもありません。
仕事に行っている時を除いて、ずっと妻の側にいて赤ちゃんと長い時間過ごしたからこその発言
だと思いませんか?
私の夫も出張で外泊した時に、この男性と全く同じことを言っていました。
多くの男性が、同じように一息ついた経験があるはずです。
育児休暇を終えて仕事に復帰した時には、私も一種の解放を感じて
「これが夫が言っていた解放感だったんだ」と思いました。
彼らはビデオカメラの前で理想の家族を演じるのでなく、
子どもを迎えた夫婦のリアルを語っていました。
国は違えど、日本人夫婦とイタリア人夫婦が直面する産後の危機は共通していますね。
イタリア人は汚れた服を家庭内で洗う
─── I panni sporchi si lavano in famiglia
汚れた服は、家庭内で洗う───
『汚れた服は、家庭内で洗う』という、中世イタリアのことわざがあります。
問題事は公にすることなく、問題が発生した環境内で解決するという意味で、
一族の名を汚すことがないよう、問題事は公にせず内側で処理されていました。
これは中世のことであって、現代には通用しないのか?
私のイタリア人の夫を例えにすると、答えはNOです。
私の夫はかなりの見栄っ張りさんで、自分を良く見せたい欲求が強く
家庭内のわだかまりを外に見せることは一切しません。
非の打ち所のない幸せな家族(動画にも出てきますがイタリアでムリーノビアンコの家族と言う)
に見える隣の家族。
見えないだけで、本当の家族の歴史には喜びも苦悩や危機も刻まれている。
我が子の誕生によって、私の時間の多くも息子たちに注がれるようになりました。
息子たちとの時間を通して私も現在進行形で毎日一緒に成長していく時間だと思うと
愛しさや感謝の気持ちで満たされます。
イタリア人カップルと言えば、いつでも一緒!
どこに行くにもいつもパートナーが同伴するんだにゃん